レスベラトロルの概論
2010-02-121930年代、すでにフランスの学者はワインの量産地に健康な高齢者が普通の地域よりずっと多いことに注目していました。1960年代に入ると、更なる調査により、フランス人はアメリカ人と同様に油脂や糖分を大量に含む食物を好んで食するものの、心血管病の発病率はアメリカ人の1/3であることが判明しました。これが有名な「フランスパラドックス」です。栄養学者は非常に早くからフランス人がワインを好んで飲むことが恐らく「フランスパラドックス」の主な理由であろうと意識していましたが、ワインのどの成分が起因しているのか、ずっとよくわからないままとなっていました。その後長い間は、オリゴメリックプロアントシアニジン(即ちOPC)の作用ではないかと考えられていましたが、関連研究で機能成分は別に存在するとのことが分かりました。1992年になって、アメリカ・コーネル大学の研究者がワインの中にレスベラトロルを探し出し、これこそ「救世主」の正体であります。
u Siemann EH & Creasy LL. Concentration of the phytoalexin resveratrol in Wine. Am. J. Enol. Vitic. 1992; 43: 49-52. |
コーネル大学の2名の学者がワインの中にレスベラトロルがあるかどうかを思いついたのは、実は日本人の功労でした。日本人は漢方の影響を受け、漢方の有効成分を研究する中で、漢方で鬱血解消に用いられる虎杖(イタドリ)が血脂を下げる効果に優れていることを発見しました。そこで現代の技術を用いて有効成分を追跡した結果、1981年、虎杖(イタドリ)内の血脂を下げる有効成分が「レスベラトロル」と呼ばれる物質であることを突き止めました。
u Arichi H, et al. Effects of stilbene components of the roots of Polygonum cuspidatum. Chem. Pharm. Bull. 1982; 30: 1766-1770. |
この化合物は第2次世界大戦前の1939年にすでに日本人の高崗氏によりヨーロッパ原産の「バイケイソウ」(図3左上)の球根から分離して得られており、その化学構造も確定されており、日本語で「日本化学会誌」上で発表され、resveratrol(レスベラトロル)と命名されていました。これは、「バイケイソウからとったレゾルシン」という意味です。これは一種の白い粉末で(図3右上)、分子量は228.25、化学構造は比較的シンプルとなっています(図3中上)。植物ポリフェノ-ルの構造上において最もシンプルな化合物の一つです。
u Takaoka, M. Resveratrol, a new phenolic compound from Veratrum grandiflorum. Nippon Kagaku Kaichi 1939; 60: 1090-1100. (in Japanese) |
図3
日本人による虎杖(イタドリ)の有效成分の研究は、アメリカ・コーネル大学のワイン中のレスベラトロル含量の研究より10年早かったものの、当時、あまり注意がひかれませんでした。アメリカ人がワインの中にレスベラトロルを検測し、フランス人が好む赤ワインにレスベラトロル含量が最高であるとわかった時、レスベラトロルが「フランスパラドックス」への回答の鍵を握っていることが初めて認識されました。これにより反響が引き起こされ、多くの研究者がこぞってレスベラトロルの研究領域に取り組むようになりました。このようにして、レスベラトロルの動物及び人体の健康への隠れた効能が全面的に発掘されるようになりました。
レスベラトロルは少なくとも70種類の植物で合成されており、ブドウ(ワイン)、ピーナッツ、パイナップル、桑の実といったよく見られる植物で多く合成されます。いわゆる植物ポリフェノ-ルは環状構造において多くの水酸基をもち(図3中上)、これらの水酸基は酸化されるという方式で抗酸化剤としての機能を発揮します。この抗酸化能力はビタミンC、Eやグルタチオンより強く、リコピンなどカロテノイドにのみ次ぐものです。ピーナッツは毎日食用される経済的な作物で、別名、「長生果」と呼ばれており、ピーナッツを食べると長生きすると言われ、数十年前まではお正月の必須食物でした。現在、ピーナッツに含まれる大量のレスベラトロルが「長寿」を手助けしていたことが判明され、その謎が明らかとなりました。
u Sobolev VS & Cole RJ. transResveratrol content in commercial peanuts and peanut products. J. Agric. Food Chem., 1999; 47: 1435-1439. |
レスベラトロルの利点は数多くあります。レスベラトロルで最初に発見された機能は、血脂降下及び高血脂症の治療効果でした。その後、血小板の非正常凝縮を抑制し(血栓形成を抑制)、動脈血管を拡張し、循環を改善することが発見されました。レスベラトロルはまた、虚血性心疾患、動脈硬化の治癒に有効で、脳血管の循環をスムーズにし、大脳の作業時間を延長させる効果もあります。また、免疫機能を高め、抗菌、抗ウィルス、抗炎症や抗アレルギー作用などもあります。
レスベラトロルの全ての機能の根拠を列挙することは、非常に難しい作業です。ここでは、レスベラトロルの人体健康への主なサポート機能をご紹介いたします。
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